APNG(エーピング)とはアニメーションするPNG画像のことで、アニメーションGIFに取って代わる次世代の新しい画像形式です。もともとブラウザベンダーのMozillaが提案した規格で、ウェブサイトのアニメーション表現に利用できます。従来はアニメーションGIFが主流でしたが、アニメーションGIFは色数の制限や輪郭のジャギーなど品質面の制限が多いファイルフォーマットです。その制限を払拭してくれると期待されるのがAPNG形式です。
※汎用的なAPNGの作り方については、記事「アニメーションを劣化なく保存できる画像形式APNGの作り方」で解説してます。
※LINEアニメーションスタンプの作り方については、記事「LINEのアニメーションスタンプはこう作る! APNGファイルの作り方を徹底解説」で解説してます。
データ容量・品質から比較する画像形式〜APNGは容量が軽くて綺麗
上図ではアニメーションGIF・APNG(8bit・32bit)・PNG連番画像をデータ容量・データ品質でマトリクス図にしました。APNG 8bitはアニメーションGIFと同じ256色のサポートなのでAPNG 8bitの方がデータ容量は若干小さいものの、差はほとんどありませんでした。APNG 32bitはフルカラーに加えアルファチャンネルもサポートしているため見た目も劣化なくきれいです。さらに可逆圧縮で圧縮されるためPNG連番画像に比べてかなりデータ容量を圧縮できます。
※APNGに対応しているブラウザChrome、Firefox、Safariでご覧ください
同じアニメ素材をアニメーションGIFとAPNGとで作成しました。アニメーションGIFでは画像の周りにジャギーが入ってしまううえに、影の部分がグレーにベタ塗り状態になってしまいます。一方のAPNGは要素の周りにジャギーも入ることなく影も思い通りの透明度を表現できています。Microsoft EdgeやIEなどサポートされていないブラウザーでは、アニメーションが再生されませんが、1フレーム目が静止画として表示されます。
導入するメリット・デメリット
APNGのメリットとしては、アルファチャンネルをサポートしているのでアニメーションGIFのようなジャギーの心配もなく思い通りのアニメーションを表現できることです。デメリットとしては、サポートしていないブラウザが存在することです。
APNGのサポート環境
2022年2月現在では、FirefoxとApple Safari(Safari 8/iOS 8以上)、Google Chrome(59以上)がAPNG形式をサポートしています(参照「Can I use」)。残念ながら、一部のブラウザー(IE11)ではサポートされていません。ただし、サポートされていない環境ではAPNGの1フレーム目が静止画として表示されます。
APNGとアニメーションGIFとの比較
APNGとアニメーションGIFの表現の差はデモでも明らかですが、表現以外にもどのような違いがあるのかフレームレート・データ容量の2つの視点で比較しました。
フレームレートの違い
アニメーションGIFはレガシーなブラウザでは表現できるフレームレートが低く、環境によってアニメーションのスピードが異なることがありました。APNGでは変換ソフト「APNG Assembler」で書きだす時にフレームレートを設定できるので、デスクトップブラウザでは60fpsでアニメーションさせることができます。ただし、スマートフォンのiOS・AndroidではアニメーションGIFとAPNGともに動作が重くなってしまい60fpsのアニメーションを実感できませんでした。
データ容量
APNG Assemblerでは、zlib・7zip・Zopfliと3種類の圧縮形式を選択できますが、今回はもっとも圧縮率の高いZopfliで書き出しました。
- Zopfli(APNG) : 379KB
- アニメーションGIF : 337KB
※デモで作成した各画像のデータです。
APNGは可逆圧縮のため、画質が劣化しません。アニメーションGIFと比べ42KBほどデータ容量が大きくなりましたが、アルファチャンネル・フルカラーを対応していることを考えると、そこまで膨大なデータ容量ではないと感じました。ちなみに連番画像(PNGで34枚)ですと合計で2.4MBほどになりました。アルファチャンネル部分や色数が増えると差が開いていく可能性があります。
サポートされていない環境でAPNGを動作させる方法
JavaScriptライブラリ「apng-canvas.js」を使用するとInternet ExplorerでもAPNGを疑似的に表示できます。APNGをHTML5のcanvas
要素で解析して描画するライブラリですので、canvas要素をサポートしているブラウザー(IE9〜)で動作します。
次の手順で導入できます。
1. HTMLにapng-canvas.js
を読み込むscript
要素を記述します。
<script src="apng-canvas.min.js"></script>
2. APNGファイルを読み込むimg
要素にclass
属性を設定します。ここではpng-image
を設定しました。
<img class="apng-image" src="../images/elephant_apng_zopfli.png" />
3. 以下のスクリプトをHTML内または外部のJavaScript内に記述します。このスクリプトでは、APNGを取得してcanvas
要素に描画する処理を行っています。
APNG.ifNeeded().then(function() {
var images = document.querySelectorAll(".apng-image");
for (var i = 0; i < images.length; i++) {
APNG.animateImage(images[i]);
}
});
最後に
APNGを調査する前まではデータ容量がアニメーションGIFに比べて膨大になってしまうのではないかと思っていました。可逆圧縮の選択肢があり容量の圧縮が可能なので、アニメーションGIFを使うシーンで導入を検討しても良いかもしれません。
APNGファイルを取り巻く状況は、Apple Safariが2014年9月のiOS 8/Safari 8からサポートしたことや、Google Chromeが2017年6月のChrome 59からサポートしたことで大きく前進しています。
APNGの作り方について「ウェブ用アニメーションを劣化なく保存できる画像形式APNGの作り方」という記事でご紹介していますので合わせてご覧いただけますと幸いです。
LINEのアニメーションスタンプがAPNGで作れるようになります!
LINEは2016年6月に「LINE Creators Marketでもアニメーションスタンプが販売できるようになる」と発表しました。「アニメーションスタンプ製作ガイドライン」に沿ったAPNGファイルの作成方法を記事「LINEのアニメーションスタンプはこう作る! APNGファイルの作り方を徹底解説」にてまとめましたので、あわせてご覧ください。
※この記事が公開されたのは7年前ですが、 今年2月に内容をメンテナンスしています。