Adobeが3DデザインツールProject Felixを発表!
機械学習の活用とCCユーザーにとっつきやすい操作感が魅力の新しいアプリ

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米サンディエゴで開催中のAdobe MAX 2016で、3Dデザインツール「Project Felixプロジェクト フェリックス」が発表されました。本記事では、速報としてProject Felixの機能をレポートしつつ、クリエイターの視点から魅力を紹介します。

▲ Project Felix発表の瞬間

Project Felixとは

アメリカのデザイン界のトレンドとして、かつて写真だった素材が3Dに変わりつつあります。基調講演で登壇したアディダスのデザイナーは「グラフィックデザインの未来は3D」と紹介。3D素材を用いると、柔軟にレイアウトの変更ができるといった利点があるからです。ただ、3D素材を扱うには専門の知識が必要なため、グラフィックデザイナーの誰もが扱えるわけではありません。Project Felixは、2Dと3Dの素材を柔軟に組み合わせられるデザイナー用のツールで、Adobeが新プロジェクトとして開発を進めています。

▲基調講演でのプレゼンテーションの様子

次のグラフィックはProject Felixで作られたものです。ボトル部分は3D、背景の浜辺が2Dの写真ですが、まるで本当に浜辺にボトルが存在するかのように合成されています。

▲ Project Felixで作られたグラフィック

このグラフィックの完成に至るまでに発表された実演の様子を紹介します。

PhotoshopやAdobe XDに似た操作性のProject Felix

Project Felixは、PhotoshopやAdobe XDとユーザーインターフェイスが似ているため、デザイナーは使い慣れたAdobe製品の操作性で作業可能です。ボタン、スライダー、設定オプションといったUI(ユーザーインターフェイス)から、カメラの位置や奥行きの設定を変更できます。

▲起動直後の操作画面

Adobe Stockの3Dモデルが利用可能

Project Felixで使用する3D素材は自分で準備することもできますが、Adobeのストックフォトサービス「Adobe Stock」も使えます。Adobe Stockの3Dモデル(3Dの形状)やマテリアルを取り込むワークフローが実演されました。

▲Adobe Stockは3D素材に対応

▲Adobe Stockで3Dモデルを検索している様子

▲Adobe Stockから取り込んだペットボトルの3Dモデル

2D部分はPhotoshop CCで作り込みが可能

Project FelixはPhotoshopとの連携もシームレスです。Photoshopで作成したラベル画像を、3Dに合成します。

▲ラベル部分を選択し、テクスチャーにPhotoshopデータを割り当てる

▲透明部分を保ったままテクスチャーとして表示される

さらに水しぶきを追加して、3Dを整えていきます。

Adobe Sensei(Adobe先生)を用いた画像処理

基調講演中、繰り返し強調していた新テクノロジー「Adobe Sensei」。Adobe Senseiとは、機械学習を用いて高度な画像処理などを行うテクノロジーです。「Sensei」は日本語の「先生」の意味で、参加した日本人ユーザーの中には「Google先生」のように「Adobe先生」とツイートしている方も多くいました。

▲ Adobe Sensei(Adobe先生)

Project Felixにおいては、ライトの配置、水平部分の認識、消失点の設定でAdobe Senseiのテクノロジーが使用されています。2D画像にマッチするような自然な3Dの配置が可能となっています。

画像の水平部分を認識したうえで3Dに背景を配置。

ライティングもAdobe Senseiによって最適に配置。ライティングの結果はレンダリングして確認します。

Project Felixの作業は以上で終了ですが、基調講演ではPhotoshopでさらに編集。Photoshopは3Dデータを組み込み「レンズぼかし」などのフィルターを適用して仕上がます。

▲ Photoshop CCでProject Felixで編集したビジュアルを編集している様子

開発チームのセッションでの質疑応答

Adobe MAXでは、基調講演の他に各技術にフォーカスしたセッションもあります。Project Felixのセッション「Archive 3D Effects in Minutes without Being a 3D Expert」の質疑応答では、基調講演では聞けなかったProject Felixの裏話をいくつか聞くことができました。

Q.リフレクションの設定は可能か?
A. 3Dの質感には、リフレクション(反射)の表現が不可欠。Project Felixでもマテリアルのリフレクションが設定可能。

Q. 動作はGPUベースか?
A. CPUベース。

Q. 3Dカメラの画像は取り込み可能か?
A.「Theta」など360度カメラの画像は、Project Felixで取り込むことは現在不可能。

まとめ:FelixはAdobeだからこそできる3Dグラフィック作成ツール

3Dグラフィックのデザインツール自体は目新しいものではありません。しかし、AdobeのCreative Cloudの一環としてリリースされることで、Photoshop等の他の高性能なグラフィックツールとのシームレスな連携が可能になります。これは他の3Dデザインツールにはできない、Creative Cloudゆえのメリットとなるでしょう。

Project Felixは2017年10月に「Adobe Dimension CC」として正式にリリースされました。詳しくは記事「Adobeが3DデザインツールDimensionを正式発表。Creative Cloudで提供開始」をご覧ください。

編集部

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