[速報]Adobe MAX 2015 基調講演レポート〜モリサワとアドビの提携、新しいワークフローCreative Sync、CC新機能発表〜

アドビシステムズ(以下、アドビ)のクリエイティブティ・カンファレンス「Adobe MAX 2015」が日本時間10月5日(現地時間10月4日)、アメリカ・ロサンゼルスにて開幕しました。このイベントは全世界から7000人以上が参加し、基調講演とセッションが3日間にわたって開催されます。初日は基調講演としてアドビのロードマップが示されました。現地に渡った弊社ICSの池田鹿野の二人が速報レポートとしてお伝えします。

Adobe MAX 2015のダイジェスト

  • アドビとモリサワの提携が発表。モリサワフォントがデスクトップとWebフォントで利用可能に。
  • Creative Cloudを利用したワークフロー「Creative Sync」をアドビが提案。
  • Apple iPad ProとApple Pencilを大々的に使ってのプレゼン。
  • 来場者全員にFUJIFILMのミラーレス一眼カメラとAdobe STOCK 年間使用権をプレゼント。

冒頭ではアドビのクリエイティビティーに対する方針が再主張された

Adobe MAXが開催された会場はアメリカ・ロサンゼルスにあるMicrosoftシアターです。恒例のプロジェクション・マッピングのオープニング映像からはじまりました。

その後、社長兼CEOシャンタヌ ナラヤン氏やSVPのブライアン氏が登壇し、「4年前にAdobe Creative CloudをAdobe MAXで発表し、クリエイティブを変えていこうとした」ことの正当性や、方針の重要性を主張しました。

▲ブライアン氏の登壇

新しいワークフローCreative Syncの提案

アドビは2011年のAdobe MAX開催以降、モバイルデバイスにおけるクリエイティブツールの重要性を力説し、多くのモバイルでのクリエイティブアプリを公開してきました(例:Proto, Photoshop Mix, Shape, Draw, Inspect等)。今回はその路線を拡大し、SketchやComp CCなどのアプリを再度紹介しました。従来のバージョンではモバイルとデスクトップで素材を同期できる機能は「Creative Cloud ライブラリ」とされていましたが、今回の発表ではそのワークフローを「Creative Sync」として再定義されています。

今回、新しいモバイルアプリCAPTURE CCを発表しました。CAPTURE CCではテクスチャ素材を加工してアブストラクトを生成できます。モバイルアプリで作成したアブストラクトはCreative SyncによってデスクトップのPhotoshop CCに即座に同期されウェブサイトのデザインに組み込むことができます。モバイルで制作したものが、すぐにデスクトップでの編集に利用できるというのが、Creative Syncの真骨頂なのでしょう。

ストックフォトサービスAdobe Stock

ADOBE STOCKは4000万枚の素材が利用できるストックフォトサービスです。扱っているものに写真やベクター素材、(後述しますが)動画素材があります。ヨガのワークショップサイトを題材に、Adobe Stockから写真のライセンスを購入するフローが紹介されました。またADOBE STOCKの年間ライセンスを来場者にプレゼントすることを発表しました。突然のプレゼントに来場者は拍手喝采となりました。

モリサワとアドビのパートナー提携を発表

今回の発表で、日本人参加者が一番盛り上がった発表です。アドビはモリサワとのパートナーシップを発表し、Adobe Typekitでモリサワ書体20種類が使えるようになりました。Adobe Typekitとはアドビが提供するフォントサービスのことで、Webフォントやデスクトップフォントとしてモリサワ書体が使えるようになります。デスクトップフォントはアドビ製品以外でも使用できます。なお、このニュースは日本のメディアでもニュースになるほど大きな反響を呼んでいます(参照「米アドビ、モリサワとフォント配信で協力:日本経済新聞」)。

詳しくはMorisawa のフォント | TypekitTypeBank のフォント一覧をご覧ください。TypekitはAdobe Creative Cloudユーザーであれば今すぐ利用できます。

パフォーマンスが向上したIllustrator CC

Illustrator CC 2015では、従来版よりパフォーマンスが向上。拡大縮小の速度と精度が向上し、最大64000%まで拡大可能になったことが紹介がされました。新機能の「Shaper ツール」ではタブレット、Microsoft Surface等のタッチ対応デバイスで簡単なタッチ操作で図形の描画・編集ができます。

InDesing CCのデジタルコンテンツ書き出し機能の強化

InDesignには「パブリッシュドキュメント機能」という新機能が実装されました。InDesignはエディトリアルデザインツールですが、インタラクションのあるデジタルコンテンツの制作とWebサーバーでの公開が可能になります。

新しいツールFuse CCの発表とPhotoshop CCの新機能

3Dのアバター作成ツール「Fuse CC」が新たに発表されました。Fuse CCは人物の顔や体の形状、服装、ポーズ等を3Dで編集するツールです。編集した3DデータをCreative Syncを使ってPhotoshop CCに取り込むと、Photoshop上で3Dアバターの角度やライティングを編集できます。アニメーションはPhotoshop CCのタイムラインに展開されます。デモでは男性がエアギターを演奏するコミカルなアニメーションが適用され、会場の笑いを誘っていました。

Photoshopでの3Dの活用例も示されました。3Dを組み込んだデザイン作成後にクライアントの細かなフィードバックに対応するのは手間がかかります。ですが、Photoshop上で3Dモデルを編集できることにより、この手間が大きく省かれます。Creative Syncによるワークフローの改善がここでもアピールされていました。

ウェブ制作の強化について〜Dreamweaver CCとMuse CC

ウェブ制作の話では、主にコーディングを用いないウェブページの作成方法についての話がありました。Museはもともとグラフィックデザイナー向けのウェブ制作アプリで、Photoshop CCやIllustrator CCを使用する感覚でウェブページを作成できます。今回、このMuse CCにレスポンシブウェブデザイン制作の機能が組み込まれました。ソフトウェア上で解像度の境界(ブレークポイント)を操作しながら、デスクトップ・タブレット・スマートフォン向けのWebデザイン制作が可能になりました。

Dreamweaver CCは、Edge Reflowのテクノロジーが組み込まれ、軽量なエディターが実装されるというアップグレードがありました。

ウェブ制作向けのPhotoshop CCの進化

Photoshopの新機能としてPSDドキュメントから特定条件の素材を抽出し一箇所に集めることができる新機能が紹介されました。たとえばスマートオブジェクトを新機能のパネルに集めることで、Creative Syncで共同作業者と連携しやすくなります。

2015年6月に搭載されたアートボード機能も強化されました。レイヤーパネル内でアートボードの絞込が可能になっています。

まったく新しいプロトタイプツール「PROJECT COMET」の発表

スマホアプリ開発に最適化された新しいデザインツール「PROJECT COMET」が発表されました。同じような項目が並ぶリストのデザインにおいて、複数のリスト項目にデザイン素材を当てはめるのが従来のデザインツールでは面倒でした。COMETではFinderから連番画像をドラッグ&ドロップすると、リストのそれぞれの項目に自動的に挿入されるデモが実演されました。

COMETはゼロベースの新しいアプリケーションであり、パフォーマンスが優れています。巨大なアートボードを保持していていてもなめらかに動いていることが実演されました。

▲リストの情報を半自動的に設定する機能の実演。会場では拍手が起きた。

▲広いアートボードでもパフォーマンスが良好らしい

「デッドプール」映画監督が紹介するPremiere Pro CCの魅力

ブルースタジオのTIM MILLER監督が登場し、2016年公開予定の新作映画「デッドプール」を紹介。この映画の作成ではPremire Proが使われています。曰く、昔のPremire Proは叩き割ろうと思ったほど使いにくいツールだったものの、現在は最高の動画編集ツールになったとのこと。ブラックジョークも交えながらの終始笑いに満ちたトークでした。

Audition CCとPremiere Proの連携

Premiere Pro CCとAudition CCの連携について発表されました。Audition CCでは動画の尺にあわせて音楽のビートやハーモニーを解析して自然に繋がるように調整するRemix機能が披露されました。Remix機能を使えばプロのツールで手作業では数十分かかるような作業がほんのわずかな時間で実現できます。Dynamic Link機能によって、Auditionで編集された音声はPremiere Pro CCにも反映されています。

Creative Syncの利点はAfter Effects CCにも

Adobe STOCKには動画素材も提供されています。無料の範囲(ウォーターマーク入り)で動画素材を利用しプロトタイプを制作、その後クライアントのOKがでてからライセンスを購入して差し替えるといったワークフローも可能になります。ライセンスの購入もPhotoshopと同じくAfter EffectsのCCライブラリパネルから処理できます。

After Effects CCの新しいフェイストラッキングツールを使えば、目・鼻・口等の要素から人物の顔を認識できます。トラッキングは容易な作業で自動的に適用されるため、ほんの僅かな時間でトラッキングのキーフレームが生成されます。ベクター素材の仮面画像を人物に合成するデモが披露されました。例によって素材としてCreative Cloudライブラリが利用されています。

新しい写真編集モバイルアプリ「Photoshop Fix」の公開

モバイルの新アプリ「Photoshop Fix」が発表されました。写真の焼きこみや覆い焼き、ビネットの編集、コンテンツに応じて編集や歪み機能など、高度な写真編集ができます。16Mの写真もスムーズに編集できるパフォーマンスの良さと、Photoshop CCに匹敵する正確さと品質も強調されました。

iPad ProのPhotoshop Fixで編集した写真は、デスクトップのPhotoshop CCで同期して再編集できます。Photoshop FixはiPadとiPhoneで使え、Android版も後日公開されるとのことです。

▲人物の歯をPhotoshop Fixを使って白くする作業を実演

参加者が歓喜した富士フイルムのミラーレスカメラプレゼント

Creative Cloudを使いこなすユーザーには良いカメラを使ってほしいとのことで、なんと来場者全員に富士フイルムのミラーレスカメラX-T10がプレゼントされることになりました。会場からは大きな歓声と歓喜の拍手がありました。Adobe Stock 1年分の使用権も含めて例年通りの太っ腹のプレゼントです。

まとめ〜現地で感じたAdobe MAX 2015の熱気と展望

今回のAdobe MAXで印象的だったのがモバイルアプリとデスクトップアプリの連携強化です。ここ4年間アドビはモバイルアプリの重要性や将来性を繰り返し主張していましたが、実際のところ多くのクリエイターは時期尚早に思っていたことでしょう。モバイルデバイスを使った制作ではプロ品質のクリエイティブが実現できないのではないかと…。

しかし、先月9月にAppleがタブレットデバイスでのクリエイティブの可能性をiPad Proの発表とあわせて主張しました。Microsoftも昨年のAdobe MAXでSurface Pro 3でのタッチワークスペースの重要性を発信していました。アドビが早くから着目していたモバイルデバイスでの制作ワークフローは、2015年現在各社と合致し、同じ方向を向いていることが再確認できたと思います。

また、筆者が驚いたのは日本のアドビのパートナーの協力です。最大手フォントベンダーのモリサワはアドビTypekitに日本語フォントを提供し、FUJIFILMが来場者全員にミラーレス一眼レフカメラをプレゼントしました。Typekitの日本語強化とライセンス一年間プレゼントは筆者が予測していた通りでしたが(アドビの粘り強い努力があったものと推測できます)、FUJIFILMの協力は青天の霹靂でした。Adobe Creative Cloudの中でも写真分野がとくに人気を集めていることの表れでしょうか。

明日はインスピレーションをテーマにした基調講演二日目や、アドビの先進的な取り組みを紹介するSneak Peakが予定されています。Adobe MAX最大の目玉と考えるSneak Peakは日本に中継されないので、現地に行った者しか情報が得られません。ICS MEDIAではそれらの速報記事を一番乗りでまとめる予定です。

※日本では2015年6月のカンファレンス「Adobe Live 2015」にて、6月のCreative Cloudのアップデートが紹介されましたが、アメリカではそれが紹介されていないそうです。そのため、日本で6月に発表されたこともAdobe MAX 2015で新機能として紹介されている箇所があります。

※この記事が公開されたのは4年前ですが、 平成29年1月16日に内容をメンテナンスしています。