Adobe AIRの技術を使えば、FlashでAndroid/iOS向けアプリを作成することができます。それもPCブラウザ向けに作っているFlashコンテンツもコード(設定ファイル関係)を少し変更すれば、モバイルアプリに容易に移植できるので、ワンソース・マルチプラットフォームとしてFlashは幅広くコンテンツ・アプリ制作に役立てることができます

しかし、気になるのはAIRアプリのパフォーマンスではないでしょうか。そこでAndroidの新旧様々な端末を使ってパフォーマンスを検証してみました。

2Dゲームのパフォーマンス

まずは2Dゲームでのパフォーマンスの紹介です。Stage3Dのフレームワーク「Starling」のサンプルとしてソースが配布されている「Whack」を使って、各Android端末で再生させてみました。左上からNexus One、左下がGalaxy Tab(初代)、右上がXperia Arc、右真ん中がGalaxy S2、右下がGalaxyS3αで、古い機種から新しい機種を順番に並べています。

ちなみにこのゲームはこちらのURLでPCブラウザで試すこともできます。

パフォーマンスとしては全体的に良好なのですが、特にXperia Arc(2011年春モデル)から非常に高いパフォーマンスで動いていることが確認できます。Galaxy Tabは表示面積が大きいため若干再生速度が落ちていますが、ゲームのプレイには不自由ないパフォーマンスではないでしょうか。Nexus One (2010年1月)など古い端末でも再生できているところがポイントです。

3Dのパフォーマンス (カバーフロー)

iTunesやMac OS Xでよく使われているカバーフローの表現。これはStage3DのフレームワークAway3Dを使って作成したものです(著書「Stage3Dプログラミング」のサンプルでもあります)。テスト端末は、画面左上からNexus One, 左下Galaxy S, 右上Galaxy S2, 右下Galaxy Note2 で、左上側から右下側に向かって新しい機種を並べています。

ちなみにこのデモはこちらのURLでPCブラウザで試すこともできます。

基本的にどの端末も滑らかに動いていますが、Nexus One (2010年1月に発売されたHTC製の端末)だけ特にタップの反応が悪いことがわかります。対して、Galaxy S(2010年10月に発売されたサムスン電子製の端末)はタップの反応も良好かつ動きも滑らかです。3Dコンテンツの制作を考える場合は、Nexus Oneの世代 (2010年初頭のモデル)は厳しく、Galaxy S以降(2010年秋モデル)からを想定したほうが良さそうです。

3Dのパフォーマンス (キャラクターアニメーション)

3Dのキャラクターアニメーションがどれだけ再生できるかを測定したビデオです。3Dのキャラクターはモデリングソフト「3ds MAX 2012」で作成したものを、Flash Stage3Dのフレームワーク「Away3D 4.0」で表示・再生させています。テスト端末は、画面左からNexus One, Galaxy S, Galaxy S2, Galaxy Note2 で、左から右に向かって古い機種から新しい機種を並べています(以下のビデオでは全てこの順番です)。

ちなみにこのデモはこちらのURLでPCブラウザで試すこともできます。

基本的にどの端末も滑らかに動いていますが、カバーフローのデモと同様にNexus Oneだけ特にタップの反応が悪かったのでタップはしていません。Galaxy S(2010年10月発売)以降の端末はどれも滑らかかつタップの反応が良好です。

2Dのパフォーマンス (Stage3Dのパフォーマンス測定)

花のイラストのオブジェクトをどのくらいの個数を表示できるか測定したビデオです。少ない数から表示していき、どのくらいまで多くのオブジェクトを表示できるかを検証しました。

ちなみにこのデモはこちらのURLでPCブラウザで試すこともできます。

特にモバイルAIRにおいてStage3Dのパフォーマンスは良好で、どの端末も高いスコアを記録しています。フレームレート30fpsを保つことのできるオブジェクトの最大個数を測定してみたのですが、グラフ表示させると次のような結果となりました。ビデオには録画していませんが、他にも検証した端末(Galaxy S3α、Xperia Arc、Galaxy Tab)があるのでそれらも含めています。

2D - Stage3D using Starling (Number of objects with keeping 30fps)

  • Nexus One (2010年1月発売): 2000個
  • Galaxy S(2010年10月発売) : 1400個
  • Galaxy Tab(2010年11月発売) : 2000個
  • Xperia Arc(2011年3月発売): 3200個
  • Galaxy S2(2011年6月発売) : 7200個
  • Galaxy Note2(2012年11月発売) : 5600個
  • Galaxy S3a(2012年12月発売): 5400個

Galaxy S3αなど最近の端末は5000個以上のオブジェクトの表示に成功しています。対して初期の端末であるNexus One、Galaxy Sであっても2000個近くのスコアを残せています。コンテンツの制作においてこれだけ表示できるのであれば、描画パフォーマンスとしては問題無さそうです。

2Dのパフォーマンス (DisplayListの計測)

Flashといえば従来からDisplayListが用いられてきました。Flash Proで作成するものも基本的にはDisplayListなので最も使われている方法と言えるでしょう。このDisplayListを利用した場合にどのぐらいのパフォーマンスがでるのか測定してみました。

AIRにはレンダリングモードがCPUとGPUとダイレクトの3種類選べるのですが、DisplayListの処理としては最も正確に表示できるレンダリングモードはCPUとしています。Stage3D(Starling)のデモと同じ表現ですので、DisplayListとStage3Dのパフォーマンス比較としても参考になるかと思います。

ちなみにこのデモはこちらのURLでPCブラウザで試すこともできます。

2D - DisplayList (Number of objects with keeping 30fps)

  • Nexus One(2010年1月発売) : 400個
  • Galaxy S(2010年10月発売) : 600個
  • Galaxy Tab(2010年11月発売) : 400個
  • Xperia Arc(2011年3月発売) : 600個
  • Galaxy S2(2011年6月発売): 1000個
  • Galaxy Note2(2012年11月発売) : 800個
  • Galaxy S3a(2012年12月発売) : 1000個

Stage3Dのデモに比べるとDisplayListのスコアが1/2〜1/7ほどの結果となりました。最低のスコアが400で最大が1000です。Nexus Oneや初代Galaxy、Xperia Arcは400〜600個のオブジェクト表示なので、少し心許ないスコアです。DisplayListでの構築は、シンプルなグラフィックのコンテンツであったり、徹底的に最適化したコンテンツに使用が限られそうです。

2Dのパフォーマンス (BitmapDataの計測)

Flashの従来の高速化手法として有名なのが、BitmapDataを利用した「Blitting」という方式です。昔、wonderflで流行したパーティクル祭りなどでも利用されていた高速化手法で、Bitmap内のピクセル情報を編集することによって、Flashの描画負荷を最小限に留めることができます。この手法を使うことで、古い端末でどのくらい動作するのか測定してみました。

ちなみにこのデモはこちらのURLでPCブラウザで試すこともできます。

2D - BitmapData (Number of objects with keeping 30fps)

  • Nexus One(2010年1月発売) : 1000個
  • Galaxy S(2010年10月発売) : 1750個
  • Galaxy Tab(2010年11月発売) : 750個
  • Xperia Arc(2011年3月発売): 1500個
  • Galaxy S2(2011年6月発売) : 4000個
  • Galaxy Note2(2012年11月発売) : 4000個
  • Galaxy S3a(2012年12月発売) : 4000個

結果としては最低のスコアが750で最大が4000であり、比較的良好な結果となりました。ただ、Galaxy Tabの結果がNexus Oneより低いなど、この手法は表示領域の影響するので、高解像度のデバイスではやや不利かもしれません。

測定しているデモが異なっているので正確な判定ではないですが、BlittingよりStage3D (Starling)のほうがパフォーマンスがでている感触がありました。

3Dのパフォーマンス (ポリゴン数の計測)

3Dの立方体のオブジェクトをどのくらいのポリゴンを表示できるか測定したビデオです。少ない数から表示していき、どのくらいまで多くのポリゴンを表示できるかを検証しました。

ちなみにこのデモはこちらのURLでPCブラウザで試すこともできます。

3D - Stage3D using Away3D (number of polygons with keeping 30fps)

  • Nexus One(2010年1月発売): 2592△(ポリゴン)
  • Galaxy S(2010年10月発売) : 49152△
  • Galaxy Tab(2010年11月発売) : 40500△
  • Xperia Arc(2011年3月発売) : 15972△
  • Galaxy S2(2011年6月発売): 111132△
  • Galaxy Note2(2012年11月発売) : 165888△
  • Galaxy S3a(2012年12月発売) : 165888△

最新の端末(Galaxy S2以降)では10万ポリゴンを超える表示ができているので、3Dコンテンツを制作するにはポリゴン数的には十分なパフォーマンスを持っていると言えるでしょう。(その他にも3Dは、ドローコールの回数や、ライトの有無、マテリアルの質感、ボーンアニメーション有無などのパフォーマンスを決定する様々な要因があるので、実現したい機能に合わせて個別に検証するのがいいでしょう)

対して、Nexus Oneは2592△、Xperia Arcは15972△で、Galaxyの最新端末に比べると数値は今ひとつな印象です。ただ一昔前(2007〜2009年頃)にFlash(Papervision3D)を用いたスペシャルサイトを作ることが流行った時期がありましたが、その頃のポリゴン数は数百〜2千ぐらいが一般的でした。限られたポリゴン数の制約のなかで優れた表現のコンテンツが多々あったことを考慮すると、ローポリであればAndroidの古い端末でも様々な3Dアプリの開発に役立てられそうです。

まとめ

特定の機種Nexus Oneだけが結果としては厳しいものとなりましたが、Galaxy S以降の端末は基本的に優良な結果だと思います。Stage3DとはFlashからGPUを利用するための技術のことですが、特にStage3Dを利用した場合にFlashのパフォーマンスが劇的に上がっているので、Stage3Dを積極的に利用するといいかもしれません。今回の検証では一般的なコンテンツを制作するうえで必要となる30fpsをターゲットにしていましたが、Stage3Dを利用するとモバイルAIRで60fpsを発揮することができることもできます。

今回は検証できませんでしたが、次回はiOS端末についても検証して報告したいと思います。次回の記事もご期待ください。よろしくお願いします。

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